『死ぬ』

外に出て発した第一声はこれだった。

「今死なれるとスゲー困るんだけど」

目の前で一也が笑う。銀世界の中、ただ二人で外にいた。雪雪雪雪。まわりは雪だらけである。なぜこんなところに?理由は簡単。名前と御幸はオーロラを見に北欧に来ていたのだ。御幸は楽しそうだが、正直雪が降ったらこたつで丸くなっていたいタイプの私は、今本当に死にそうである。

『オーロラ出てから外に出ればいいんじゃないの〜?』

「なんでもかんでも人任せにしちゃいけねーよ?」

不平不満たらたらだが、もうわかっている。御幸一也はもうこう言い始めたらきかないのだ。ため息が白く染まって、諦めが目に見える。すると。

『あ!』

なんてことだろう。こんなに早くオーロラに出会えるなんて。

「おお!見えたじゃん!」

闇の中揺れるカーテンのようなオーロラ。夜空に輝くあさぎ色。

『…綺麗だね』

私が住んでいる町よりずっと星が見えるほど澄んだところのはずなのに、オーロラが現れるだけでその光はずっと見づらくなってオーロラばかりに目がいくようになった。

「何とかして見に来た甲斐あったわ」

一也が笑う。一也は休みが少ない中、私をこんな遠いところまで連れ出してくれたのだ。

『ありがとう』

一也は、私にいつも大きな世界を見せてくれる。野球なんか興味なかったけど、野球も見るようになったし、アメリカとか遠いところの話もたくさんしてくれるし私を連れていってくれる。一也の世界を知る度に一也がどこか私の知らない遠くへ行ってしまうような不安にかられていた。でも、今日は一緒に世界を広げた。私も一也も初めて、オーロラを見れたのだ。それが嬉しくて仕方ない。

そんなことを考えていたら、一也の手が私の手を包み込んだ。

「まだ寒い?」

あったけーだろ、と笑う一也。なるほど。これがしたいから手袋つけるなって言われたのか。

『あったかいよ』

高校生のときと変わらない笑み。色々と変わってしまったけど、一也のこの笑顔は変わらない。

オーロラはそのあとすぐに消えてしまった。

手は繋いだまま、ホテルへ向かって歩く。

『ホテル帰ったらちゃんとあたたかくしよう』

「一緒に風呂でも入る?」

『バカじゃないの』

いつまでもこんな憎まれ口が叩けるといいなぁなんて考えてる名前に未来の約束が目に見えるようになるのは、ほんの数分後のことであった。



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